飛行船広告は看板!?いったいどれくらいの人が見るんだろう?

職場での昼休み。子供の頃なりたかった職業の話で盛り上がっています。
「私はケーキ屋さんでした」
「僕はサッカー選手だったなあ」
「野球じゃなくて、サッカーなのが時代の移り変わりだねえ。やっぱり、先輩は看板博士ですか?」
おいおい、そんな職業ないだろう。実はパイロットなんだよ。

「え、意外ですね!」
幼い頃、飛行船が舞台のアニメを見て、それ以来、大空を駆け巡りたいというのが憧れなんだよねえ。まあ、視力も悪かったから今となっては叶わぬ夢だけど。

「飛行船、いいですよね。空は男のロマンですよね!」
「あらあら、それは女性差別よ。私も空って好きですよ」
うんうん。じゃあ空のロマンの話を……

「そういえば、飛行船といったら、広告がつくことありますよね。あれも看板なんですか? 教えてください、看板博士!」
わー、結局そっちの話になるのかぁ。

飛行船って、そもそも何だろう?

最初に、飛行機と飛行船の違いから。
飛行機は、プロペラやエンジンなどにより動力や揚力を得ることで、空気より重い機体が浮かびます。対して飛行船は、その内部に軽い気体を大量に充填することで、機体全体が空気より軽くなり、浮かぶことができる仕掛けになっています。

歴史でいうと飛行船のほうが古く、まず18世紀には同じ原理である気球が既に完成しています。
飛行機の原点は、20世紀初頭のライト兄弟による動力飛行機の発明と言われています。
しかし、それに遡ること数十年前、19世紀半ばには飛行船は完成しており、ライト兄弟の頃には既に空を飛んでいました。

そして飛行船広告も古くからあります。
例えばアメリカ最大のゴム&タイヤ会社の、グッドイヤー社は、ゴムの生産の技術を生かし、飛行船も手掛けています。
空飛ぶ広告塔として、同社のロゴマーク入りの飛行船は、約100年前から世界各国の空を飛んでいました。
マンガに登場したり、模型のおもちゃが販売されていたりするなど、古くから親しまれています。

日本においても、同じく大正時代には既にビール会社などが飛行船広告を行っています。
特に当時はテレビなどのマスメディアが無いため、一度に大衆へアピールできる飛行船は、広告媒体として活躍していたようです。
また、飛行機と違って空中で停止が可能であり、また小型の飛行機よりも大きい船体であることが逆に広告宣伝に向いていた、といったことも活躍の理由だったとか。

その後、戦時中にはアドバルーンを含めた空を使った広告媒体は一旦制限されるものの、戦後しばらくしてからは解除。
日立製作所のカラーテレビを宣伝する「キドカラー号」や、岡本太郎がデザインした積水ハウスの「レインボー号」といった飛行船が、再び空を賑やかにしてきました。

現在の飛行船広告事情

ただ残念ながら、現在日本では飛行船広告は運用されていません。
一番最近まで大々的に行っていたのは「メットライフ生命」でしたが、2016年末にブランド戦略の一環で、残念ながら運航終了となってしまいました。
全長39m、総重量2t。企業名と共にスヌーピーのイラストが描かれた飛行船「スヌーピーJ号」。
実際に見た、あるいは直接ではないにせよ写真や広告を目にした人は多いのではないでしょうか。
「スヌーピー 飛行船」で画像検索すると、数多の人が撮った画像がヒットします。
いかに高い注目度だったのかがうかがえます。

また公式Twitterのフォロワー数も2万人以上。
運航計画に加えて、その上空から撮影した景色も投稿され、大変人気を集めていました。
(飛行船「スヌーピーJ号」@Airship_SnoopyJ
参考: https://twitter.com/Airship_SnoopyJ )

当時の担当者の方のインタビュー記事がありますが、一般に現在飛行船広告が厳しい理由として、運用コストが高さに加えて、発着場やスタッフの確保が困難であるという点があげられています。
(最近、飛行船を見ましたか? – Excite Bit コネタ
参考: http://www.excite.co.jp/News/bit/E1293604211233.html )

大空というロマンと、マーケティング視点

では、改めて飛行船広告について。
もちろん飛行船そのものが好きという人は多いです。
しかし、広告ツールとして見た場合、広告主にとってはどのような位置づけになるのでしょうか?
飛行船広告の特徴を、マーケティング視点から見てみましょう。

まず最大の特徴は、そのもの珍しさです。
飛行船自体が目を惹きますし、加えて先のスヌーピーJ号の画像検索結果のように、飛行船の写真はSNSで拡散されやすく、結果、通常よりも大きな宣伝効果が生じます。
昔は大変流行っていたものであるので、レトロブーム同様に同世代による「懐かしい」「よく見たなあ」といった感情の共感や、異なる世代間での「昔はアドバルーンとかもよく飛んでたなあ」といった会話が楽しめるという要素を持っています。

また、競合相手がいない広告という点も大きなメリットです。
駅や交差点など数多くの看板が立ち並ぶ中では、その方角へ視線を誘導するだけで一苦労。
加えてそのあとに特定の看板に集中させるには、相当の工夫が必要です。
しかし飛行船の場合、大空の先には他に競合する広告はありません。
天気のいい日に空を見たくなるのは人の常。
一旦視線を上空に移せば、そこには飛行船以外のライバルはいません。

確かにコストや様々な準備や確保、そして天候によって左右されてしまうというデメリットは抱えています。
しかし、実はこの上ない優位に立つことができる広告媒体でもあるのです。

その他の大空を翔る広告

飛行船広告は看板!?いったいどれくらいの人が見るんだろう?
では、その他の空を飛ぶ広告を見ていきましょう。

まず、飛行機の機体に様々なデザインを塗装した、ラッピング広告があります。
その代表は、全日本空輸の「ポケモンジェット」でしょう。
残念ながら2016年に終了となったため、現在は運航していませんが、機体いっぱいにピカチュウをはじめとするポケモンが描かれたジェット機は、子供のみならず大人のファンも多数いました。
ポケモンジェット見たさに飛行場にファンが集まったり、このジェットが飛ぶプランをわざわざ選ぶ人がいたりと人気でした。
ただしバスやタクシーなどのラッピング広告とは違い、運航中は遥か上空にあり、その機体の広告を見る人はいません。
そこが飛行船広告との違いとなります。

また日本で初めて、航空機そのものを広告媒体としたのは「ポカリスエット」(大塚製薬)だと言われています。
そのポカリスエットが過去2回大空を使って行った広告がスカイメッセージ。
人工的に飛行機雲を発生させ、その雲で(電卓のデジタル表記の数字の要領で)文字を作るというもの。
青空自体をキャンバスとして行う、夢のある広告でした。
(ポカリスエットは、こんなチャレンジも|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
参考:http://pocarisweat.jp/action/challenge/ )

これからの空の広告

昨年からドローン(小型無人航空機)の商業利用が本格的に進んでいます。
日本においては様々な整備の都合上、まだ時間がかかるかもしれませんが、空を使うという概念は広まりつつあります。
そうなると、無音で優雅に定位置をキープすることのできる飛行船広告というのは、また見直されるかもしれません。

「そうですよねえ。例えば東京丸の内みたいに高層オフィスビルが立ち並ぶ周辺には、ドローンを飛ばして……というのはなかなか難しいでしょうねえ。そうなると、より上空に浮かぶ飛行船じゃないと、視線は集まらないだろうし」
「無音というのも、大きな要素ですよね。ドローンやヘリコプターだとどうしても音が出てしまうので、それを騒音と捉える人も出てきちゃうでしょうし」

飛行船好きだから、ついつい今回はひいき目に語っちゃいましたが、飛行船広告の効果が絶大というのも本当の話。
一旦、その街の上空を飛べば、基本その時間に外にいる人の大半は目にする、と考えると、テレビCM以上の効果はあります。
特に単発で大きくPRしたい、特定エリアの数千人に広めたい! という内容がある場合は、選択肢の一つとして考慮してみてくださいね。

「看板博士! もう昼休みは終わりだから、憧れの職業や空へのロマンは一旦置いといて、仕事に戻ってくださいね!」
は~い。……あと、四角四面じゃなくて、あのずんぐりとした姿がまた愛嬌があっていいんだよなあ。(しみじみ)

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