看板の文字フォントで何屋さんか当てられる?

看板に関するトリビアに詳しく、周りから看板博士と呼ばれる男。
最近は、様々なメディアに出演……している姿を夢想するクセがついちゃいました。
今日はなんかクイズ番組の夢を見ているようですよ。

「クイズです。これから、ある企業の看板やロゴの一部分だけの写真を3枚お見せします。それぞれどこの企業かお答えください」
はいはい。答えてみますよ。

「なお、すべてアルファベットのIの部分だけとなります。某大手スーパーや、海外の某ITメーカーなど『i』にまつわる企業やマークは沢山ありますからね。ではどうぞ!」
わかりました!
左から、某携帯電話会社、某デパートの最初の文字、最後はアイスクリームの会社だったかな?

「すばらしい! 正解です!!
では、看板博士には優勝賞品としまして、看板の文字にまつわるトークをする権利が与えられます」
え? 何、その賞品。

「それでは、優勝賞品授与です。はりきってどうぞ!」
えー、看板の文字ということですが、ロゴやマークなどが組み合わさったものが(…って、これはいったい、なんてクイズ番組なんだ!!)

文字とロゴマークの関係

えー、看板の文字ということですが、ロゴやマークなどが組み合わさったものが多くあります。
例えば、うなぎ屋さんの看板で「う」の文字がうなぎのイラストマークになっている、のがわかりやすい例でしょうか。
そして、文字全部と組み合わさってはいなくても、文字とロゴやマークには深い関係があります。

まず、企業のロゴやマークなどは、その企業名の頭文字を使っていることが多数あります。
例えば、百貨店の高島屋は、赤い丸の中に「高」の字が入ったロゴ(正しくは、旧字体のはしご高と呼ばれる文字)が有名です。
トヨタ自動車の楕円を組み合わせたトヨタマークも、車のステアリングホイールを表しているのと同時に「T」の文字を象っています。
(参考:http://www.toyota.co.jp/jpn/auto/emblem/passion/)

一見気づかないけど実はそうだったロゴとしては、日立製作所の社章も企業名から来ています。
円の上下左右に角が生えたようなマークに見覚えありませんか?
通称「日立マーク」や「亀の子マーク」などとも呼ばれたこの社章。
実は漢字の「日」と「立」とを組み合わせたもの。
(参考:http://www.hitachi.co.jp/IR/personal/history/1910/index.html )
ですので、実は左右対称ですが上下対称にはなっていません。
スーツの襟元に社章を付ける時に、上下逆さになっていて怒られた社員がいたという都市伝説も聞かれます。

アルファベット1文字で、商品やお店が浮かぶ!?

このような頭文字。英語の場合はより顕著。
そもそも英語にはイニシャルという概念があり、日本語における言葉の最初の文字以上に、そのイニシャルは様々な模様としてデザインがされてきました。

またITが普及した昨今は、新たな活用用途が出てきました。
それは、アイコン。
インターネットで当該企業のサイトを開いた際や、スマホにアプリを入れた時を思い出してください。
例えば、Yahoo!だと「Y」、googleだと「G」の文字がアイコンとして浮かびませんか。

ピクトグラムなどのイラストをアイコンにすると、直感的にイメージされやすくなります。
反対に、文字だけのアイコンでその企業を打ち出すというのは、最初の頃は伝わりづらくイニシャル文字としての認識しかありませんが、企業が育っていく中で「この文字から始まるこの企業」という認知が進んでいくと、ブランド戦略上、とても大きな意味があります。

また、1文字だけでなく、アルファベット2文字を重ねたマークもよく目にします。
「L」と「V」を重ねたルイ・ヴィトンのマークは、ファッションへの興味が薄い人でも見覚えあるはず!
このようなアルファベット2文字を重ねたものは、モノグラムと呼ばれます。

業種に使われがちなフォントあるある

看板の文字フォントで何屋さんか当てられる?
さて、ここまでは特定のお店やブランドに関しての話でしたが、ここからはより広く、一般論を。
といっても、業種と文字フォントの関係に正解というものはありませんので、あるある話としてお聞き頂くと幸いです。

同じ言葉であっても、フォントを変えることでイメージは全然違うもの。
これは看板を作る際に限らず、パソコンでプレゼン資料を作っていたり、写真に文字キャプションを入れたりする際など感じたことがある人も多いのではないでしょうか。

例えば、太い文字だと読みやすく力強さが伝わります。
逆に細い文字だとスタイリッシュな印象となります。
それを踏まえると、同じお酒を提供するお店であっても、活気ある居酒屋の看板は太い文字。
対して、おしゃれなバーは細い文字の看板が多いようです。

また既存のフォントでなく、手書き文字(もしくは手書きに似せたフォント)の看板もよく目にします。手書き文字を使うことで、書き手が伝えたいイメージをより強調するという効果があります。

ごっつい男性店員が元気よく接客する焼肉やラーメンの場合は手書き、逆に落ち着いたカフェの場合はまるでメモのようなさらりとした文字。
またカフェでも、メイドカフェなどの場合は極端に丸みを帯びさせて可愛いらしさを推しだすなど。

特に日本の場合は書道という文化もあり、筆文字によるクセは大変インパクトがあります。
本来お役所や総合病院、道路や駅の案内板などでは、あまり個性を出すのを求められないため、手書き文字などは使われません。
しかし、文部科学省や法務省の庁舎の看板は、筆文字で堂々と書かれています。
気合いや意気込みを表したいのかもしれません。

筆文字と、日本の伝統芸能の看板

筆文字についてもう少しだけ。
筆文字は、昔から日本の伝統芸能の看板にも使われており、今でもその多くは手書きのものとして書かれ続けています。

まずは歌舞伎。
芝居文字とも呼ばれる「勘亭流」で、演目や演者が書かれた看板が掲げられます。
落語も同じように筆で書かれた文字がありますが、こちらは「寄席文字」。
見比べてみると同じ筆で書かれたような文字でも、歌舞伎の勘亭流とは違いがあるのがわかります。
さらに大相撲の番付に使われているのは、これら2つとはまた異なった文字。
「相撲字」という書体になります。

看板に書かれたこれらの文字には、余白が少ないという特徴があります。
中でも、大相撲の番付表の場合は、格付けが低いほど小さく細かい文字に。
特に番付表には載る中でもっとも低い階級である序の口は、肉眼では厳しいくらいに小さい文字で書かれているため「虫眼鏡」とも呼ばれています。
何故ここまで余白が少ないのでしょうか?

その大きな理由はゲン担ぎ。
歌舞伎も落語も相撲も、興行で多くのお客様に来てほしいという願いを込めて、看板の文字についてもみっしりと書いて、余白が無いようにしているのです。
そのため、通常の書道の筆文字と比べると、より丸みを帯びた太い文字となっています。

「……そうですね。このクイズ番組「ザ・看板ショー」も、もっともっと多くのお客様に来てもらいたいですね。
以上で、優勝賞品の授与は終了となります。看板博士、トークお疲れ様でした」

え、もう終わりなの? これだったらまだまだ語りたかったなあ。
例えば筆文字は書き順がわかるというのも特徴で、一画目から二画目に移るときのこの…

「あ、すみません。それ以上は、クイズに正解してからとなります。2問目、挑戦しますか?」
ああ、これだったら楽勝だよ。どんとこーい!
「それでは第2問です。
ここに全国の銀行の看板の『銀行』という文字だけを抜き出してみました。これを見て、それぞれどこの銀行か当ててください。それではスタート!」
え、え、えーーー!?

(でも、金融関連にお詳しい方だったら即答しそう。同じ業種の同じ単語であっても、全然フォントって違いますので、一度クイズのつもりで見比べてみると楽しいですよ!)