ラッピングバスは走る看板だ!

今日の出張はバス移動。乗ったバスの車体の話から始まります。

「いやあ、すごいですね。このバス。
近々大物アーティストのコンサートがあると聞いてはいましたけど。そのアーティストの顔写真をバス一面に貼り付けているなんて」
ああ、ラッピングバスだね。最近、よく見るようになったけど、実際にこうやって乗るのは初めてだなあ。

「なんか自分がコンサート客になったような不思議な気分ですね。
ところで、ラッピングバスって走る看板とも言われているんですよね、看板博士?」
(だから、看板博士じゃないんだけどなあ)
そうだね。ラッピングバスって、バスの長所をうまく取り入れた、素敵な広告だと思うよ。

「バスの長所? 看板そのものに車輪つけて走らせるだけじゃないんですか?」
おやおや。
ラッピングバスに乗っていながら、バスの素敵さに気付かないとは。
じゃあ、目的地までの30分、みっちりバストークをしてあげよう。こら、スマホいじってるんじゃなくて、しっかり話を聞きなさい!

「はいはい(うわー、軽い気持ちだったのに~)」

そのとき、ラッピングバスの歴史が動いた

車体に広告を掲載して各地を回る宣伝カー自体は、昔から存在していました。
しかし、当時は車体へ全面塗装するしか広告する術はありませんでした。
そのため、特定の広告が載ったキャラバンカーやトレーラーが全国を回るなど、繰り返し稼働していました。

そんな中、粘着フィルムの技術が進歩しました。
これまでのフィルムに比べて剥がれにくく、走行中の風圧にも耐えうることができる。
それでいて、剥がすのも従来よりも簡単。そして、車体側を傷めることもない!

また2000年頃は景気後退の真っ只中。
それまで宣伝カーは、各地方自治体の条例により、サイズや走行などが制限されていました。
しかし、東京都で財政対策の一環として規制を緩和してラッピングバスを走らせたところ、反響が大きく、大きな収入となりました。

この技術の実現と、世間の動向とがあいまって、ラッピングバスは爆発的に普及することとなりました。

ラッピングバスのメリット

では、街中にどーんと掲示するいわゆる普通の看板と違って、ラッピングバスにはどんなメリットがあるのでしょうか?

まずラッピングバスは、特定の場所に固定されている看板と違って、動いています。当たり前ですが(笑)。
ただ、そうやって動いている分、人目に触れる量が桁違いとなります。

また単に視界に入りやすくなるだけでなく、ラッピングバスの広告は目に留まって印象に残りやすいのです。
動いているものはついつい目で追ってしまうという人間の本能もありますが、ラッピングバスは通常の広告よりもそれらを意識してカラフルな色合いが使われることも多いようです。

そして、バスの車体は結構大きいため、そのスペースを活かせるというメリットもあります。
例えば壁へのポスター広告の掲載は、壁に余白スペースがあっても、目いっぱい貼ってはいけないことも多々あります。
ラッピングバスの場合、車体全体を使った大きな広告を貼ることも可能です。
ただ本来のバスの種別や会社がわからなくするようなラッピングは、利用者に支障をきたすのでNGですのでご注意を。

バスと広告の相性

さて改めて考えてみると、そもそも「バス」と「広告」は相性がいいようです。

まずは、車内アナウンス広告。
路線バスに乗っていると、停留所に着く際に「次は〇〇停留所。△△へはこちらで降りると便利です」といったメッセージを聞くことはありませんか?
普段は聞き流すことが多いかもしれませんが、地図に頼らずとも降りるべき場所がわかるので、目的地がドンピシャだった際には大変便利。
傾向としては、病院や寺社仏閣といった公共性の高い施設が紹介されることが多いようです。

他にもバスの中を見渡すと、前方の案内板や窓ガラスの一部、さらには吊り輪の取っ手部分などにも広告が貼られています。
特に混雑していて携帯や本などを見ることができない時、視線の先に広告があるとついつい見てしまいがちです。

さらには、バスにまつわる他の部分にも広告は潜んでいます。
路線バスや長距離バスは停留所がありますが、そこに貼られている路線図や時刻表以外にも、近所の施設や行き先にまつわる広告がよく掲載されています。
また観光バス利用時に渡されるパンフレットはもちろん、(最近はあまり見なくなりましたが)路線バス乗車時に渡される切符にも広告が入っている場合があります。

このようにバスが、ラッピング以外にも広告の場として使われる理由は色々。
まずバスは公共性が高いので、乗客が多い、すなわちターゲットとなる顧客が多いという点。
そして、刷り込み効果。
乗客も繰り返して利用することが多いので、知らず知らずのうちに何度も目にするうちに無意識に覚えてしまうこともあります。
さらにバス会社によりますが、広告料金自体が大変お手ごろ。
料金が値上げすることもあまり無いため、毎年そのまま更新され、長期に渡り掲載されていることが多いようです。

ラッピングバスは走る看板だ!

選ばれたのはバスだけでした! ラッピング乗り物でバスが人気の理由

と、ここで一つの疑問が。
世の中には、自動車やタクシー、電車や新幹線、そして飛行機など、乗り物と呼ばれるものは沢山あります。
それに対し、(海外ではラッピングタクシーなども主流だったりしますが)日本でラッピング広告がされているのはほとんどがバスです。
なぜ、ラッピングバスだけが選ばれているのでしょうか?

まず自動車やタクシーと比べた場合、単純に「バスのほうが大きい」というメリットがあります。
特に、普段道路を走っているのは普通自動車がほとんどなので、大きくて目につきやすいというのは長所となります。

また路線バスなどは「走行ルートや時間帯が決まっている」という点も見逃せません。
例えば、走行するのが商店街沿いか、病院や学校沿いかなどで、ターゲットが選定されていることになります。
また「この時間帯にここにいると、あのラッピングバスを見ることができる」といった会話が弾むなど、定期的ゆえの認知も生まれてきます。

しかし、「大きい」「走行ルートが決まる」となると、電車や飛行機もあります。
これらと比べた時の利点は何か?

実は、電車や飛行機は高スピードが逆にデメリットの要因なのです。
バスよりも速いスピードで長時間走行するため、空気抵抗も強くなり、ラッピングするための粘着フィルムが剥がれやすくなってしまうのです。
また移動が速すぎると、見ている人にとっても書かれているメッセージなどが読みづらいという問題点もあります。

おまけ:看板博士が想像するラッピングバスが人気の理由

「たしかに、道路を走行するバスのスピードだと、すんなり文字も読めますもんね。
 さすがは看板博士!」
あと、すごく個人的な見解なんだけど、先に触れたバスと広告の親和性の高さもあるのかなあと思うんだよ。
「え、どういうことですか?」

例えば広告を載せたいと会社へ相談する時、窓口がわかりづらかったり、窓口があるのは知っていても「こんなこと相談していいのかな」といった気後れで躊躇したり、ハードルが高いことあるんだ。
でも特に路線バスの場合は、地元密着も多いし、申込の窓口がわかりやすく、広告の相談の受付にも慣れていると思うんだよ。
……あくまでも、想像なんだけどね。

「どうなんですかねえ。実際のところ聞いてみたいですねえ」
でも、さすがにバス会社に知り合いはいないからなあ。

「あ、じゃあ、どうですか? ラッピングバスに看板博士の広告を出して、聞いちゃってみては」
え??
「『看板のこと、なんでも教えてください』って文章も載せて、あと折角だから博士の顔写真もでっかく載せちゃいましょうよ!
うん、きっと多くのメッセージが届くこと、間違いなし!(ゴニョゴニョ)
ほら、どうですか?」

こらこらー!
スマホの画像加工ソフトで、人の顔写真をバスに貼り付けたりしない!!
(……ふむ、しかしこういうバスが街中を走るなんて、アーティストっぽくて意外とステキかも!?)