センスを活かせ!気持ち伝える手書き看板あれこれ!

「『この記事、読んでください』
……なんですか、看板博士。このメッセージは?」

とあるWebサイトの文章の見出しを相談されてね。
で、1つのアイデアとして出たのをメモしておいたんだ(って、看板博士じゃないんだけどなあ)。

「なんかすごく直球ですね。センスが無いというか」
その分、気持ちが出ているのは伝わるけどね。まあ、作者も相当頭をひねったらしいよ。
こういうメッセージって、手書きの看板に書くフレーズみたいにセンスがいるからなあ。

「でも確かに手書きの看板に、何を書いて、どう思いを伝えるのかって難しいですよね。
看板博士としては、何かいいアイデアってあります?」

うーん、看板というよりもキャッチコピーの話になりそうだなあ。
あまりマーケティング要素が強くならないよう、じゃあ軽くこれまで見たことのある看板のメッセージの話でもしてみようか。
(なお、特定の看板についての言及にならないよう、文言など一部変えている場合もあります。あらかじめご了承ください。)

『キレイにトイレを使って頂き、ありがとうございます』

「キレイにトイレを使って頂き、ありがとうございます」
最近のトイレでは、このように書かれた看板や貼り紙をよく目にします。
(あ、もしかしたら男性用のほうだけかもしれません。見覚え無い女性のかた、すみません。)

従来は「トイレはキレイに使いましょう」といったようなフレーズが多かったのですが、最近はこの「ありがとうございます」タイプのものが増えてきました。
実際、このタイプに変えたところ、トイレがキレイになったという事例も増えたそうです。

その理由として、いくつかの要素があります。

    • 命令でもお願いでもないので、強制力も感じない。
    • しかし、その裏では「みんなはキレイに使っているんだ。自分も汚してはいけないな。」という意識が自然と芽生えやすい。
    • 何よりも、感謝の意を表したポジティブな文章である。

昨今「上から目線」の発言は何かと嫌われる傾向にあります。
そのような中で、この「ありがとうございます」という言葉を前面に出した看板は、お願いをする上での絶妙な立ち位置なのかもしれません。

『梅雨でジメジメした気持ちを、私たちと一緒に吹き飛ばしましょう!』

手書き看板のウリは、すぐにメッセージを変えることができるという点にもあります。
そこで、季節の挨拶を入れてみましょう。
……まるで手紙の書き方講座のようになっていますが(笑)。

季節の話題に触れることで、見ている人に、今この瞬間の、同じ時間、同じ空間を共にしているという感覚が伝わります。
常時同じメッセージが書かれた看板ではないんだ、という特別感。
そして「うんうん、そうだよねえ」という共感が生まれやすくなります。

また「あなた」という呼びかけでなく、「私たち」という言葉を使っているのもポイント。
演説などのテクニックで、呼びかけをする際の主語は「あなたは」より「私たちは」を使ったほうが、より仲間意識や当事者意識が生まれやすくなるそうです。
もっともあまり多用しすぎると「別に、私はあなたたちの仲間じゃないんだけど」という反感も生まれてしまいがちなのでご注意ください。

『今日が誕生日なんです!(店員 ○○)』

手書き看板の場合、書き手の個性をより強くしたほうが、ネットで言うところの「中の人」の姿が見え隠れして好まれる場合もあります。
いっそのこと、ブログやSNSの代わりに、黒板を使って身近なことの情報発信をするといいかもしれません。

その場合、お店とは関係ないことでもOK。
内容も大事ではありますが、それよりも「毎日のように内容が変わっている」ことのほうが大事です。
いざ書くとなると、実際はネタが尽きるもの。
その場合、極端な話、昨日食べたものとか、パッと思いついたギャグでも、とにかく何でもいいから書き続けるようにしましょう。

喋りかけられるのが苦手な業種には向きませんが、特に、お客さんと会話をしたいような喫茶店や美容室などでは、書かれていた何気ないことがきっかけに話が広がるということもあります。
下手にフレンドリーさを気取らなくても、思ったままのことを書いたほうが「素」が見えて好まれます。

ただし「好き」を語るのはいいですが、「嫌い」あるいは「何か攻撃的なことへの好き」を語ると、炎上の原因になりかねませんので、ご注意を。

『美味しい、あったまる、お腹いっぱい』

センスを活かせ!気持ち伝える手書き看板あれこれ!
「CMの名フレーズ」というと思いつくものがいくつか浮かびませんか。
特にリズムに乗ったメッセージは印象的で、記憶にも残りやすくなります。
とはいっても、急にメッセージは思い浮かばないかもしれません。
ただ、私たちは数百万人にCMを流す必要がある名コピーライターではないので、そこは気楽に考えましょう。

一番簡単なのは、単語を2つ3つ並べたもの。
「これを食べると、あなたのお腹は膨れて、なおかつとても美味しい……」とダラダラ書くよりも、歯切れよく、パッと見て目にも留まりやすくなります。
某牛丼チェーン店のように、ポンポンポンとテンポよく決まると、それだけで大変印象に残ります。

余談ですが、イチゴの「あまおう」は「あかい」「まるい」「おおきい」「うまい」の4つの頭文字を繋げて名付けられました。
こうやっていくつかのフレーズを並べるのは日本人特有の言葉センスなのかもしれません。

『お孫さんとの思い出を残せるカメラ』

最後に硬い話を。
マーケティングの世界ではドリルにまつわる格言があります。
「ドリルを買いに来たお客さまは、ドリルが欲しいのではなく、穴が欲しい(空けたい)のである」と。

この場合、お客さまへ気持ちを伝えるには、丈夫さや高機能といったドリルの性能ばかりを伝えては的外れで、「こういう穴が空けられます」といった穴についての話のほうが大事となってきます。

某大手通販サイトなどはそのことを実にわかっています。
例えばカメラを売る時。
スペックの話はほとんどせず、そのカメラを使うとどんな写真が撮れるか、そしてそれでどう幸せになれるか。
家族での旅行、卒業、結婚といった人生の節目のシーンの大事さを触れつつ、それを残すことができるという点での魅力を伝えています。

この考え方は、看板のメッセージでもとても大事です。
例えば、同じ料理店であっても、学生街にあって「ワンコインでお腹いっぱい」にさせたいのか、オフィス街にあって「夜の接待でも使える落ち着いたお店」とアピールしたいのか、あるいはこだわりの味を求める人に向けて「地産地消の地元ならではの味」を大事にしているのかなど。
誰にどう使ってほしく、そしてどうハッピーになって欲しいのかによって、訴えてくる内容も違ってくるのです。

あなたの好きなメッセージを見つけよう!

「ほぉ、色々あるんですねえ。ただ単に『買って』なんて書いちゃダメなんですね」
そうだねえ。ただ、一概にも言えない部分もあってね。
CMのキャッチコピーの話になるんだけど、四半世紀前に某女性アイドルが薬のCMをやっていたんだよ。
その時のフレーズが「○○を買ってください」というド直球のもの。

「ええっ。それでどうなったんですか?」
その本人の気さくなキャラクターと、周りのCMのまわりくどい薦め方の中での異質さがよかったんだろうね。相当流行ったんだよ。
まあ、これは極端な例になるけど、時にはストレートなホンネのほうがウケることもあるみたいだね。

「そうなると、何をメッセージとして書くべきか。本当に悩んじゃいますね」
まあ、一番良いのは、自分が好きなメッセージやフレーズって絶対あると思うんだ。
そこのどこに惹かれるのかを考えつつ、同じような表現をするというのがいいかもしれないね。
どこまで「中の人」らしさを出すか、お願いっぽくするか共感っぽくするか、あるいはいっそストレートにお願いしてみるかなど。
小説家の文章もそうらしいけど、まずは模倣からはじめて、どこに惹かれたのかを考えるといいと思うよ!

「なるほど。ところで、Webサイトの文章の見出し、いいアイデア出ましたか?」
これが浮かばなくてねえ。いっそ思い切って、『この記事、読んでください』ではじめてみようかなあ。

「うーん、そんな直球に気持ちを伝えて、読んでくださるかた、いらっしゃるんですかねえ……?」

(お読み頂き、ありがとうございました!)